マティスが好きな大学生の日常

ふつうの大学生のふつうの日常です。

羽生善治『大局観 自分と闘って負けない心』

 本書序盤に「合理的な思考がきちんとできるようになると、感覚的にも研ぎ澄まされていくものなのか。それとも、ロジカルになればなるほどエモーションは鈍化するのか」というテーマが提示されている。これは私も数学の技術的な部分を勉強しているときに、度々気になっていたことだったので、羽生さんがどのような結論に至ったのかを知ることがその後の読書の推進力になった。


 読み終わっても羽生さんなりの答えが明確に書いてある部分はなかった。ただ、長い棋士人生の中でたくさん読み、研究し、実践を重ねていくことで、羽生さんでも素朴な疑問をもつことを忘れ、新しい時代についていけなくなったこともあるんだなと思った。これはつまり、将棋に対する敏感さを失ったということなんだと思う。


栗原康『村に火をつけ、白痴になれ  伊藤野枝伝』

 伊藤野枝。大正時代の無政府主義者ウーマンリブの元祖。28歳のとき憲兵隊に虐殺される。


『村に火をつけ、白痴になれ』。

 いくつか好きな話があった。


 ひとつめは、拘束された恋人の大杉栄を助けるために野枝は、内務大臣、後藤新平に手紙を書いた。

「あなたは一国の偽政者でも私よりは弱い。」



 それと、哲学者のバートランド・ラッセルの自伝に書いてある話。

「わたしたちがほんとうに好ましいとおもった日本人は、たった一人しかいなかった。それは伊藤野枝という女性であった。かの女はわかく、そして美しかった。ある有名なアナキストと同棲していた。」



村に火をつけ,白痴になれ――伊藤野枝伝

村に火をつけ,白痴になれ――伊藤野枝伝

加藤一二三『羽生善治論 「天才」とは何か』

 加藤さんの独特の考え方に最初はとまどったけど、だんだん楽しくなってきて、最終的におもしろく読了した。特に森内さんと戦ったときに二手指し ( 二手連続で指してしまい ) 反則負けたしたときの加藤さんなりの分析が面白かった。


「あのとき私にはどういうわけか現実感がなかったのも事実だった。どうも森内さんが着ていたモスグリーンの背広が原因だった気がする。モスグリーンの背広を着た森内さんと対峙していると、なぜか現実感がなくなってしまったのだ。」


 他にも前日においしいビフテキを食べたから、非常に調子がよく、強気な将棋が指せたという話も味わい深かった。


千葉雅也『勉強の哲学 来るべきバカのために』

 千葉雅也『勉強の哲学』の抜き書き。


『言語を通して、私たちは、他者に乗っ取られている。』

『言語の形態が、この身に刻まれた。それは、刺青である。』

『勉強とは、新たに言葉と出会い直すことで、その「言語の痛気持ちよさ」を反復することなのです。』

『勉強とは何をすることかと言えば、それは、別のノリへの引っ越しである。』

『勉強によって自由になるとは、キモい人になることである。』

『勉強とは、かつてのノっていた自分をわざと破壊する、自己破壊である。』

『繰り返しますが、勉強とはノリが悪いことなのです。』


勉強の哲学 来たるべきバカのために

勉強の哲学 来たるべきバカのために

副島隆彦『余剰の時代』

 副島隆彦さんの言っていることは一貫していないと思うことが多かったけど『余剰の時代』を読んで、副島さんは一貫していると思い直した。

 副島さんはとにかく疑っているのだ。例えば、権力者の言うことは疑う ( なぜなら彼らは騙そうとしているから ) 。ふつうの人々が言うことも疑う ( なぜなら彼らは騙されているから ) 。本書にはこんな記述がある。「注意しなさい、用心しなさい、警戒しなさい、疑いなさい」。

 『余剰の時代』では、題名からは分からないが、楽観主義と悲観主義をめぐる壮大な思想史が展開されている。そしてライプニッツやルソーの楽観主義が批判され、ヴォルテールニーチェの悲観主義が肯定される。世の中、甘くないんだ。( ヴォルテール )

町山智浩『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』

 町山智浩『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』を読んだ。無邪気な文体でわりと重いアメリカの話がレポートされているコラム集。コラムのタイトルをいくつか抜き出してみる。

「子供にブッシュを拝ませる洗脳キャンプ」
「9・11はホモなアメリカへの神罰!」 
「アメリカは拷問までアウトソーシング
「ウォルマート、激安の代償」
魔女狩り連合軍と戦った3人の歌姫」
「アメリカの時代は終わるのか」


 2006年から'08年夏までに書かれたコラム集なので古い話が多いけどすごく面白かった。最近はどうなっているのかしら。

アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない (文春文庫)

アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない (文春文庫)

中村元『古代インド』

 ものすごくまじめなインド史の本。インドについておもしろい話がたくさん書いてあった。例えば、インドの婦人たちは、ものを考えるとき、片足をかける習慣があり、またかゆいところをかくようなしぐさをする、という話から仏教図像が読み解かれたりする。


 実証的な記述をしようと努めているところに好感を感じたけど、例えば、釈迦やインド美術の話をするときに著者のテンションが上がっているところに、さらに好感を感じた。


 ネパール仏教と日本仏教の類似の話が気になった。


古代インド (講談社学術文庫)

古代インド (講談社学術文庫)